
要約
出産後の育児に不安を感じるのは、母親になる準備が足りないからではありません。赤ちゃんの泣き方や睡眠、授乳には個人差があり、出産前にすべてを予測することはできないからです。産前に「相談先」「家事・育児の分担」「ママが休める支援」の3つを準備し、一人で抱え込まない産後をつくりましょう。
赤ちゃんとの生活が楽しみな一方で、
「ちゃんとお世話できるかな」
「泣き止まなかったらどうしよう」
「母乳やミルクは足りるのかな」
「眠れない日が続いたら大丈夫かな」
と不安になる妊婦さんは少なくありません。
結論からお伝えすると、出産後の育児不安を小さくするために、育児の知識をすべて覚える必要はありません。
大切なのは、出産前に次の「3つの安心」を準備することです。
- 迷ったときに相談できる相手を決める
- 家事と育児の担当を決める
- ママが休める支援を確保する
「一人で判断し、一人で頑張る状態」を避けることが、産後の安心につながります。
1 育児への不安は、多くの妊婦さんが感じています
初めて出産する女性を対象にした民間調査では、産後に不安を感じると答えた人のうち、75.0%が「育児に対する不安」を挙げました。次いで多かったのが、「育児による睡眠不足への不安」の62.5%です。
小規模な調査であり、すべての妊婦さんを代表する数字ではありませんが、育児と睡眠が大きな心配事になっていることが分かります。
出産前に不安を感じるのは、準備が不足している証拠ではありません。
赤ちゃんには一人ひとり個性があり、よく眠る時間、授乳の間隔、泣く理由、落ち着く方法なども違います。出産前に育児書を何冊読んでも、実際の赤ちゃんとの生活をすべて予測することはできません。
不安を感じるのは、「赤ちゃんを大切に育てたい」という気持ちの表れでもあります。

2 赤ちゃんのお世話と、ママの回復はセットです
産後総研では、産後ヘルパー株式会社の利用者アンケート1,285件を確認しました。
産後ケアサービスを選んだ理由では、「母親ケアがあるから」が886人、「赤ちゃん・新生児ケアがあるから」が866人でした。
また、利用後に良かったケアとして「母親の食事や家事など」を挙げた人は1,067人でした。サービス満足度については、回答者1,250人のうち1,217人、97.4%が「大満足」または「満足」と回答しています。
この結果から、産後の安心には赤ちゃんのお世話だけでなく、ママの食事、休息、家事負担の軽減が深く関わっていることが分かります。
疲れがたまっていると、普段なら落ち着いて考えられる小さな迷いも、大きな不安に感じやすくなります。
赤ちゃんのお世話を学ぶことと同じくらい、「自分が休める仕組み」を準備することが大切です。
なお、このアンケートは産後ヘルパー株式会社のサービス利用者を対象としたもので、複数回答を含みます。サービスを利用していない人との比較ではなく、全国の妊産婦全体の傾向や、サービス利用との因果関係を示すものではありません。
3 産前にできる準備1 「迷ったら聞く先」を登録する
育児情報をすべて暗記するよりも、分からないときに相談できる相手を決めておきましょう。
たとえば、次の相談先があります。
- 出産予定の産婦人科や助産院
- 自治体の保健師・助産師
- かかりつけの小児科
- 自治体の産後ケア担当窓口
- 利用予定の産後ケア事業者
これらの連絡先を、夫婦それぞれのスマートフォンに登録しておくと安心です。
連絡先を「産後SOS」などの名前で一つのメモにまとめ、相談できる内容や受付時間も書いておくと、いざというときに迷いません。
赤ちゃんの体調について夜間や休日に判断に迷った場合は、国や自治体が案内する子どもの医療相談窓口も利用できます。緊急性が高いと感じた場合には、ためらわず救急へ連絡してください。
「すべて自分で判断しなければならない」という状態を避けるだけで、心の負担は軽くなります。

4 産前にできる準備2 家事・育児を「担当者と時間」で分ける
産後の役割分担を「できる方がやる」と決めていると、気づいた人、慣れている人、赤ちゃんの近くにいる人に負担が集中しがちです。
その結果、ママがほとんどの家事と育児を担当することもあります。
産前のうちに、担当者と時間を具体的に決めておきましょう。
たとえば、
- 沐浴はパートナーが担当する
- 夜のミルク後の片付けはパートナーが行う
- 洗濯は午前中に家族が担当する
- 夕食は家族、宅配、産後ヘルパーに頼む
- 買い物はネットスーパーを利用する
といった形です。
ポイントは、最初からママの担当を決めるのではなく、まず外部サービスに任せること、パートナーが担当すること、家族に頼めることを決めることです。
最後に残った部分の中から、ママが無理なくできることだけを担当します。
赤ちゃんとの生活は予定どおりに進まないこともあります。そのため、完璧な役割分担表をつくる必要はありません。
「困ったときには誰に頼むか」が決まっていること自体が安心につながります。
5 産前にできる準備3 「休む予定」を先に入れる
産後は、空いた時間に休もうと思っても、赤ちゃんのお世話や家事に追われて、休めないことがあります。
そこで、出産前から「ママが休む予定」を先に決めておきましょう。
自治体の産後ケア事業には、施設に泊まる宿泊型、日帰りで利用する通所型、自宅で支援を受ける訪問型などがあります。
利用条件、申請方法、費用、利用できる時期は市区町村によって異なります。妊娠中に自治体へ確認しておくと、出産後に慌てずに済みます。
自宅で過ごしたい場合は、訪問型産後ケア、産後ヘルパー、食事宅配、家事代行なども選択肢になります。
出産日は予定から前後することがあるため、次の点も確認しておきましょう。
- 対応地域
- 支援内容
- 予約の変更方法
- キャンセル条件
- 利用開始日の調整方法
- 上の子やペットへの対応
「出産後、つらくなったら探す」のではなく、出産前から候補を決めておくことが大切です。

6 支援は「できないから」ではなく「回復と育児に集中するため」に使う
外部サービスを利用することに、申し訳なさを感じる方もいます。
しかし、産後のママが食事や家事を誰かに任せるのは、怠けるためではありません。身体を回復させ、赤ちゃんとの生活に慣れるためです。
支援サービスを選ぶときは、次の4点を確認しましょう。
- 赤ちゃんのお世話や育児相談ができるか
- ママが休める支援があるか
- 食事や家事を頼めるか
- 必要な場合に医療や行政へつないでもらえるか
産後ヘルパー株式会社のような訪問型サービスは、住み慣れた自宅で赤ちゃんと過ごしながら、母親ケア、赤ちゃんケア、食事、家事などをまとめて相談できることが特徴です。
自治体や医療機関の産後ケアと、民間の訪問サービスを組み合わせても構いません。
必要なのは、「家族だけで頑張り切る計画」ではなく、「困ったときに助けが来る計画」です。
気分の落ち込みや強い不安が続く、赤ちゃんが寝ていても眠れない、自分や赤ちゃんを傷つける考えが浮かぶといった場合には、一人で我慢せず、出産した医療機関、自治体の保健師、助産師などへ早めに相談してください。

7 まとめ|育児の安心は「知識の量」より「頼れる仕組み」
育児への不安をゼロにする必要はありません。
出産前に、
- 相談先を登録する
- 家事と育児の担当を決める
- 休むための支援を準備する
という3つを進めておけば、産後の「どうしよう」を、「ここに聞こう」「今日は頼ろう」に変えられます。
赤ちゃんを大切にすることと、ママを大切にすることは、同じ方向を向いています。
育児は、母親一人でするものでも、夫婦だけで抱えるものでもありません。家族、地域、医療機関、自治体、産後ケアサービスなどを上手に頼りながら、安心して赤ちゃんを迎える準備を進めていきましょう。
8 よくある質問(FAQ)
Q1. 初めての出産です。育児の勉強はどこまで必要ですか?
すべてを覚える必要はありません。抱っこ、授乳、オムツ替え、沐浴、安全な寝かせ方などの基本を出産施設等で確認し、分からないときの相談先を用意することを優先しましょう。
Q2. パートナーが育休を取る予定でも、外部支援は必要ですか?
育休中でも、二人とも寝不足になることがあります。食事や洗濯など一部だけでも外に頼める「予備の支援」があると、体調不良や予定外の出来事に対応しやすくなります。
Q3. 産後ケアや産後ヘルパーは、いつ調べ始めればよいですか?
妊娠中から調べて問題ありません。自治体の制度は申請方法や予約時期が異なり、民間サービスも対応地域や空き状況があるため、出産予定日より前に候補と連絡方法を確認しましょう。
Q4. 宿泊型と訪問型は、どう選べばよいですか?
施設で休息とケアをまとめて受けたい場合は宿泊型、自宅で生活の流れを整えながら支援を受けたい場合は訪問型が選択肢になります。上の子の有無や移動の負担も含めて選びましょう。
Q5. 人を家に入れることに抵抗があります。
事前相談で支援範囲、担当者、衛生管理、個人情報の扱い、変更・キャンセル条件を確認しましょう。短時間や数回から試し、相性を見ながら増やす方法もあります。
コラム執筆
●産後総合研究所 主席研究員、産後ヘルパー株式会社 取締役、中小企業診断士 高久 広

中小企業診断士として3,000社以上の企業の経営支援に23年間従事。2014年、神奈川産業振興センターの創業支援施設で創業直後の産後ヘルパー株式会社の支援を開始し、5年にわたり成長を支援。2019年に取締役へ就任し、経営、マーケティング、Web、労務管理などを担当し、産後ケア業界に13年従事。産後総研では、経営分析や実務データの視点から産後ケアに関する調査・研究に取り組んでいる。
●産後総合研究所 主幹研究員、産後ヘルパー株式会社 代表取締役 明 素延

慶應義塾大学大学院商学研究科で計量経済学・商学を学び、同大学産業研究所共同研究員、商学研究科助教を歴任。自身の出産・産後ケア経験を契機に、2013年から「少子化と経済―産後ケア」を研究テーマとし、韓国の産後管理士資格を取得。2014年に産後ヘルパー株式会社を設立し代表取締役に就任。産後女性の心身の回復と育児支援に取り組んでいる。産後総研では、経営分析や実務データの視点から産後ケアに関する調査・研究に取り組んでいる。

