【研究レポート Vol.5】訪問型産後ケアは家事支援と心の支えに|1,285件の利用者アンケート分析

産後ヘルパー株式会社の産後ケア

【要約】訪問型産後ケアには、食事や家事を助けるだけでなく、話を聞いてもらえる安心感も求められています。産後総研は、産後ヘルパー株式会社が2014~2025年に収集した利用者アンケート1,285件を分析。食事・家事支援への評価は741件、精神的支援への高評価は682件と報告しています。一事業者の利用者評価であり、医療上の効果を証明するものではありませんが、産後の支援を考える際には、作業の手助けと相談できる関係の両方が大切であることを示唆しています。

産後ヘルパー株式会社の産後ケア
産後ヘルパー株式会社の産後ケア

1 研究概要:1,285件の利用者の声から産後ケアを考える

本記事は、産後総合研究所(産後総研)が、つぎ夢経営研究会のメンバーと積み重ねてきた研究のうち、「産後総研レポート Vol.1 No.2(2026)」を一般の方にも分かりやすく紹介するものです。

研究テーマは「現代日本の産後ケアの実情と今後の在り方について」。副題は「産後ヘルパー株式会社の長期アンケート分析に基づく実証研究」です。森寛之・高久広・明素延が執筆し、2026年7月4日に発行されました。

分析対象は、同社が2014~2025年に収集した利用者アンケート計1,285件です。自由記述の内容を読み取る分析と、評価項目などを件数・割合で整理する分析が行われています。1,285件はアンケートの件数であり、重複のない実人数かどうかは資料から確認できません。

2 なぜ、家事だけでなく対話に注目するのか

研究レポートは、核家族化や地域のつながりの弱まりを背景に、産後の家庭が身近な支援を得にくい状況を問題として取り上げています。そのうえで、産後ケアの役割を、家事や育児の手助けだけに限定せず考えています。

食事を用意してもらうことと、育児の不安を話せることは、異なる支えです。家の中の作業が片づいても、気持ちを話す相手がいないという困り事は残るかもしれません。これは研究結果を生活場面に置き換えた解釈ですが、必要な支援を考えるうえで大切な視点です。

3 主な結果:生活を助ける支援と、気持ちを支える支援

1)食事・家事支援と精神的支援の両方が評価された

研究レポートの図表2には、次の件数と割合が示されています。割合は原文の記載どおりです。

  • 食事・家事支援評価:741件、57.6%
  • 精神的支援への高評価:682件、53.0%
  • 母体回復への効果:518件、40.2%
  • 再利用意向:603件、46.9%
  • 「もっと早く利用すればよかった」:411件、31.9%

食事・家事支援への評価が最も多く、精神的支援への高評価も全体の半数を超えています。ここから読み取れるのは、家事支援の重要性に加え、心の支えも多くの利用者に評価されているということです。精神的支援のほうが家事支援より高く評価された、と件数から結論づけることはできません。

また、「母体回復への効果」は資料の評価項目名です。医師の診察や検査で回復を測定した結果として扱うものではありません。再利用意向も、実際に再利用した人の割合とは区別する必要があります。

2)自由記述では、安心感や話を聞いてもらえることが評価された

自由記述には、家事が助かったという評価に加え、安心できた、話を聞いてもらえたという趣旨の声が見られました。経験や専門性を信頼し、任せられたことへの評価も報告されています。

図表1では、支援内容を身体的支援、精神的支援、育児支援、家族支援に整理しています。食事作りや睡眠の確保だけでなく、話し相手、孤立感の軽減、夫婦の負担軽減なども含まれています。利用者は、個々の作業に加えて、家庭で過ごす時間全体の支えを感じていた可能性があります。

3)身体的支援と精神的支援の両方を求める分類は37%

図表3の支援ニーズ分類は、身体的支援中心が35%、精神的支援中心が28%、両方必要が37%です。どちらか一方に絞らない支援の必要性がうかがえます。

ただし、分類の詳しい基準は掲載されていません。この分類と、図表2の「精神的支援への高評価53.0%」は異なる集計なので、同じ意味の数値として扱わないことが大切です。

4 利用前には、価格やサービス内容への不安もある

図表4では、利用前の価格不安が302件・23.5%、利用前の不透明感が267件・20.7%、夫・家族の理解不足が188件・14.6%、利用への心理的抵抗が254件・19.7%と報告されています。

これらは、実際に利用した人のアンケートを分析した結果です。利用しなかった家庭を含む社会全体で、同じ割合の不安があることを示すものではありません。

それでも、利用を検討する人に伝えるべき情報の手がかりにはなります。費用だけでなく、何を頼めるのか、どのような人が訪問するのか、どこまで相談できるのかが分かると、家庭に合う支援かを考えやすくなるでしょう。研究レポートも、利用前の不透明感を軽減する情報発信を今後の課題に挙げています。

5 妊娠中のご夫婦へ:作業分担と相談相手を一緒に考える

今回の結果から考えられる準備は、産後の家事分担だけでなく、困ったときに話せる相手も夫婦で確認しておくことです。例えば、食事を誰が用意するか、休みたいときに誰が赤ちゃんを見るか、不安が強いときに誰に相談するかを、別々の項目として考えてみます。

父親やパートナーも支援を受ける家庭の当事者です。すべてを一人で引き受けようとせず、自分が担えることと、家族外の手助けが必要なことを共有すると、無理の少ない役割分担につながると考えられます。

「もっと早く利用すればよかった」という評価は、早めに情報を集める意義を考える手がかりです。ただし、この研究は予約時期や利用開始時期の効果を比較していません。誰もが同じ時期や回数で利用すべきだという結論ではなく、家庭の希望と状況に合わせて検討することが大切です。

6 自治体・医療・助産関係者へ:支援の評価に安心感も含める

研究レポートは、身体的支援と精神的支援を組み合わせること、利用前の不安を減らすこと、支援に頼ることを肯定する社会的な理解を広げることを提案しています。これらは分析を踏まえた著者らの考察です。

現場への応用としては、家事や育児をどれだけ支援したかに加え、本人が相談しやすかったか、不安を話せたかという視点を利用後の確認に取り入れることが考えられます。これは本記事の提案であり、研究で有効性が検証された評価方法ではありません。

また、研究レポートは継続的な研修とサービス品質の維持も課題に挙げています。行政、医療、民間事業者が連携する際には、各機関が対応できる内容と相談先を明確にすることが、家庭に支援を案内するうえで役立つと考えられます。

7 研究結果を見る際の注意点

本研究は一事業者の利用者アンケートに基づく分析です。利用していない家庭との比較や、利用前後の心理状態を共通の尺度で測定した結果は示されていません。このため、訪問型産後ケアが産後うつを予防・治療することや、特定の支援が満足度を高める因果関係を証明したとはいえません。

対象地域、回答率、利用者の詳しい属性、自由記述の分類手順、項目間の重複の扱いも、資料からは確認できません。複数年の回答をまとめているため、この数値だけで最近の利用者の傾向を示すこともできません。

著者には、分析対象のサービスを提供する産後ヘルパー株式会社の取締役と代表取締役が含まれます。実務に根ざした資料としての意義とともに、提供事業者と研究者の関係も踏まえて読む必要があります。

8 産後の支えを、家族の外にも広げる

今回の研究は、産後の家庭を支える際に、食事や家事の手助けと、気持ちを受け止めてもらえる関係の両方に目を向ける意義を示しています。負担や希望には個人差があり、必要な支援も家庭によって異なります。

産後の生活に不安がある場合は、家族だけで抱え込まず、自治体、医療機関、助産師、産後ケア事業者などへ相談することが大切です。産後ヘルパー株式会社の訪問支援を検討する場合も、希望する支援内容と対応範囲を相談時に確認してください。

9 よくある質問

Q1.訪問型産後ケアでは、家事以外の支えも期待できますか?

本研究では、対話や安心感など精神的支援への評価も報告されています。ただし、一事業者の利用者評価です。具体的な支援内容は、検討するサービスに確認してください。

Q2.夫やパートナーは、産後に備えて何を話し合えばよいですか?

家事・育児の分担に加え、困ったときの相談先を話し合うことが考えられます。研究では夫・家族の理解不足も報告されており、外部の支援を使うことへの希望も共有するとよいでしょう。

Q3.自治体の産後支援に、この研究をどう生かせますか?

利用前の不安と、利用後に評価された内容を知る参考資料にできます。ただし、特定事業者の利用者に限られるため、地域全体の需要や制度の効果を推計する根拠として、そのまま使うことはできません。

Q4.医療・助産関係者は、産後うつの予防効果があると説明できますか?

この研究だけを根拠に、予防効果があるとは説明できません。報告されているのは利用者の評価であり、産後うつの発症率を比較した研究ではありません。心身の不調については、医療機関などへの相談につなげる必要があります。

Q5.利用料金や必要な利用回数は分かりますか?

この研究レポートから、具体的な料金や適切な利用回数は分かりません。価格への不安は報告されていますが、費用対効果の比較は示されていないため、家庭の予算や希望を踏まえて確認してください。

10 参考資料・研究レポートのご案内

産後総合研究所(産後総研)は、産後ケアの実務で得られた知見を研究レポートとして発信しています。研究活動については産後総合研究所の公式サイトをご覧ください。本記事の詳細な根拠は、以下の研究レポートに掲載されています。

森寛之・高久広・明素延「現代日本の産後ケアの実情と今後の在り方について―産後ヘルパー株式会社の長期アンケート分析に基づく実証研究―」産後総研レポート Vol.1 No.2(2026)、2026年7月4日発行、全4ページ。主な集計結果は3ページの図表2~4に掲載。


●産後総合研究所 研究員、中小企業診断士 森 寛之

産後総合研究所 研究員、中小企業診断士  森 寛之

大学院修了後、製造業にて設計・開発を中心に、技術営業、海外調達など幅広い業務に従事。2024年11月に中小企業診断士登録。製造業や飲食店等の経営支援に携わるほか、産後ヘルパー株式会社および産後総研の支援に従事。自身も小学生男子2人を育てる父親であり、転勤先で両親からの支援が限られる中、当時は産後ケアサービスの存在も知らず、夫婦で手探りの乳幼児期を経験した。この経験を原点に、産後ケアの普及と持続可能なサービス提供、とりわけ担い手となる人材の採用・確保に関心を持ち、調査・研究に取り組んでいる。


●産後総合研究所 主席研究員、産後ヘルパー株式会社 取締役、中小企業診断士 高久 広

●産後総合研究所 主席研究員、産後ヘルパー株式会社 取締役、中小企業診断士 高久 広

中小企業診断士として3,000社以上の企業の経営支援に23年間従事。2014年、神奈川産業振興センターの創業支援施設で創業直後の産後ヘルパー株式会社の支援を開始し、5年にわたり成長を支援。2019年に取締役へ就任し、経営、マーケティング、Web、労務管理などを担当し、産後ケア業界に13年従事。産後総研では、経営分析や実務データの視点から産後ケアに関する調査・研究に取り組んでいる。


●産後総合研究所 主幹研究員、産後ヘルパー株式会社 代表取締役 明 素延

産後総合研究所 主幹研究員、産後ヘルパー株式会社 代表取締役 明 素延

慶應義塾大学大学院商学研究科で計量経済学・商学を学び、同大学産業研究所共同研究員、商学研究科助教を歴任。自身の出産・産後ケア経験を契機に、2013年から「少子化と経済―産後ケア」を研究テーマとし、韓国の産後管理士資格を取得。2014年に産後ヘルパー株式会社を設立し代表取締役に就任。産後女性の心身の回復と育児支援に取り組んでいる。産後総研では、経営分析や実務データの視点から産後ケアに関する調査・研究に取り組んでいる。


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