【研究レポート Vol.7】産後ケア利用と産後うつ予防・回復の関連性|訪問型産後ケア利用者アンケート分析

【要約】

産後総研は、2014~2026年に集めた訪問型産後ケア利用者アンケート1,285件を分析しました。利用期間・頻度を確認できた各46人では、利用が長期・高頻度の群ほど産後うつ関連症状が少ない傾向があり、症状があった112人の利用後評価では、休息・睡眠や精神的サポートが多く挙げられました。ただし、利用後だけの自己申告調査であり、訪問型産後ケアの予防・回復効果や因果関係を示す結果ではありません。

1 この研究で分かったこと

結論から言えば、訪問型産後ケアの利用者は、休息・睡眠、精神的サポート、育児不安への支援、孤立への支援を肯定的に評価していました。一方、この研究だけで「訪問型産後ケアを利用すれば産後うつを予防・回復できる」とは判断できません。

研究から直接分かった主な事実は、次の3点です。

  • 利用期間を集計できた46人では、症状ありの割合が1~3日群の50.0%(6/12人)から、15日以上群の14.3%(1/7人)まで段階的に低下していました。
  • 利用頻度を集計できた46人では、症状ありの割合が週1回以下群の42.9%(6/14人)に対し、週4回以上・ほぼ毎日群では7.1%(1/14人)でした。
  • 産後うつ関連症状があったとして抽出された112人の自由記述では、身体的な休息・睡眠が112人(100.0%)、ヘルパーによる精神的サポートが106人(94.6%)、育児不安の解消とスキルの習得、孤立状態への介入がそれぞれ91人(81.3%)に挙げられました。

ただし、利用期間・頻度の分析は各46人と少人数です。利用期間や頻度以外の条件をそろえた比較でもないため、ここで示されたのは「利用が長期・高頻度の群ほど症状ありの割合が低かった」という関連傾向です。

本記事は、産後総研が、つぎ夢経営研究会のメンバーと積み重ねてきた研究レポート「Vol.1 No.3」を、一般の方にも分かりやすく紹介するものです。

2 研究の背景と目的

この研究の目的は、訪問型産後ケアの利用状況と、利用者が自己申告した産後うつ関連症状、利用後の評価との関係を探索的に調べることです。

産後は、身体の負担が残る中で授乳や夜間の世話が始まり、休息不足、育児不安、孤立が重なる場合もあります。自宅を訪問する産後ケアがどう受け止められているかは、家族と支援者の双方に重要です。

研究レポートは、身体的な支援だけでなく、話を聴くことや孤立を防ぐことを含め、産後ケアの役割を検討しています。

3 誰を、いつ、どのように調べたのか

調査を実施したのは産後ヘルパー株式会社です。2014年から2026年までに、訪問型産後ケアの利用者から回収した利用後アンケート1,285件を分析しています。

調査方法は、サービス利用後の自己記入式アンケートです。研究レポートでは、回答全体に加え、設問や分析目的に応じて次の集団を取り出しています。

  • 利用期間を集計できた46人
  • 利用頻度を集計できた46人
  • 産後うつ関連症状があったとして抽出された112人
  • 症状がなかった利用者として別分析の対象になった538人

一方、各集団をどの基準で抽出したか、利用期間と利用頻度の46人が同じ回答者か、質問文や回答時点がどう設定されたかは、研究レポートに詳しく書かれていません。この点は結果を読むうえでの重要な注意事項です。

4 主な調査結果

利用期間が長い群ほど症状ありの割合が低い傾向

利用期間を確認できた46人では、症状ありの割合は、1~3日が50.0%、4~7日が33.3%、8~14日が25.0%、15日以上が14.3%でした。期間が長い群ほど割合が段階的に低くなっています。

これは研究から直接分かった事実です。ただし各群は7~15人と少なく、もともとの健康状態、家族の支援、出産状況などの違いを調整していません。そのため、利用期間を延ばせば症状が減ると断定することはできません。

1)利用頻度が高い群でも同様の傾向

利用頻度を確認できた46人では、症状ありの割合は、週1回以下が42.9%、週2~3回が27.8%、週4回以上・ほぼ毎日が7.1%でした。

研究者は、十分な期間と頻度で産後ケアを利用することが、症状の少なさと関連する可能性を考察しています。ただし、これは研究者の考察であり、訪問回数による予防効果が証明されたわけではありません。

2)休息・睡眠と精神的サポートが多く評価された

産後うつ関連症状があったとして抽出された112人では、全員が身体的な休息・睡眠に関する肯定的な記載をしていました。106人はヘルパーによる精神的サポートを評価し、91人は育児不安の解消とスキルの習得、同じく91人は孤立状態への介入を挙げています。

症状がなかった利用者として分析された538人では、身体ケアが481人(89.4%)、食事や家事の負担軽減が442人(82.2%)、第三者による母親ケアが371人(69.0%)、傾聴・話し相手が180人(33.5%)に評価されました。

これらは、訪問型産後ケアが、家事だけでなく、休息の確保や心理面の支えとして受け止められていたことを示す結果です。ただし、いずれも利用者自身による利用後の評価であり、医療上の治療効果を測定したものではありません。

5 結果から考えられること

研究者は、身体ケア、家事負担の軽減、第三者による母親ケア、傾聴などを組み合わせ、生活と心理の両面を支えることに意味があると考察しています。

記事上の解釈として、訪問型産後ケアには、家事支援に加えて休息時間をつくり、不安や孤立を和らげる役割も考えられます。ただし、必要な支援や利用回数には個人差があります。

6 妊娠中・産後の家族にとっての意味

この研究は、休息、食事や家事の支援、相談相手を出産前から準備する大切さを示しています。

夫やパートナーは家事・育児を分担し、本人が休めているか、不安を話せるかを一緒に確認することが重要です。自治体、医療機関、助産師、産後ケア事業者への相談先も事前に調べておくと、産後に動きやすくなります。

気分の落ち込みや強い不安が続くなど、心身の状態が心配な場合は、産後ケアだけで対応しようとせず、医療機関、助産師、保健師などへ相談してください。

7 自治体、医療・助産関係者にとっての意味

自治体や支援者には、産後ケアを休息、家事支援、育児技術、傾聴、孤立防止を含む複合的な支援として設計する視点が重要です。妊娠中から制度を知らせ、必要な家庭が早めに利用できる導線も求められます。

効果検証には、利用前後で同じ尺度を使い、比較群や年齢、出産歴、家族支援なども確認する必要があります。助産師や医療関係者は、サービスへの満足と医療上の症状改善を区別して評価することが重要です。

8 結果を見る際の注意点・研究上の限界

この研究には、次の限界があります。

  • 産後ケア利用者だけを対象とした利用後アンケートで、非利用者との比較や利用前後の同一尺度による測定がありません。
  • 産後うつの診断や、妥当性が確認された心理尺度による評価ではありません。
  • 利用期間・頻度の分析対象は各46人で、各群の人数も少数です。
  • 年齢、初産・経産、出産方法、家族の支援状況など、結果に影響しうる要因を調整していません。
  • 総回収数1,285件と各分析対象の関係、抽出条件、欠測回答の扱いが十分に示されていません。
  • 症状有無の人数や一部の症状別割合には、本文内で母数を確定できない箇所があります。本記事では、これらを主要な結論の根拠から外しました。

したがって、この研究は訪問型産後ケアと利用者評価の関係を考えるための探索的な資料です。すべての産後の女性に結果を当てはめたり、因果関係や治療効果を判断したりすることはできません。

9 まとめ

訪問型産後ケアの利用者アンケートでは、休息・睡眠、精神的サポート、家事負担の軽減、育児不安や孤立への支援が肯定的に評価されました。少数例の分析では、長期・高頻度で利用した群ほど産後うつ関連症状が少ない傾向もみられましたが、予防・回復効果を証明した結果ではありません。

産後の生活に不安がある場合は、家族だけで抱え込まず、自治体、医療機関、助産師、保健師、産後ケア事業者へ早めに相談することが大切です。産後ヘルパー株式会社では、訪問型産後ケアに関する相談を受け付けています。サービス内容は産後ヘルパー株式会社のWebサイトで確認できます。

10 よくある質問

Q1.訪問型産後ケアを利用すれば、産後うつを予防できますか?

この研究だけでは、産後うつを予防できるとは判断できません。長期・高頻度の利用群ほど関連症状が少ない傾向はみられましたが、分析対象は46人で、比較群や利用前の測定がありません。心配な症状がある場合は医療機関などへ相談してください。

Q2.夫やパートナーは、産後にどのような支援をするとよいですか?

休息を確保し、家事・育児を分担し、不安を話せる環境をつくることが大切です。研究では休息、家事負担の軽減、精神的サポート、傾聴が評価されました。必要な支援は家庭ごとに異なるため、本人の希望を確認してください。

Q3.自治体の産後ケア事業に、この研究をどう生かせますか?

休息、家事、育児相談、傾聴、孤立防止を組み合わせた支援を検討する材料になります。ただし、事業効果の判断には、利用前後の評価や非利用者との比較などが必要です。

Q4.助産師や医療関係者は、この結果を診断に使えますか?

この結果を産後うつの診断に使うことはできません。利用者の自己申告アンケートであり、医療者の診断や妥当性が確認された尺度を用いた調査ではないためです。支援ニーズを考える参考資料として読む必要があります。

Q5.訪問型産後ケアは、何日・週何回利用するのがよいですか?

この研究から最適な日数や回数を決めることはできません。46人の分析では長期・高頻度の群ほど症状ありが少ない傾向でしたが、因果関係は確認されていません。本人の体調、家族の支援、自治体制度などを踏まえて相談してください。

参考資料・出典

  • 産後総合研究所「産後ケア利用と産後うつ関連症状との関連性:訪問型産後ケア利用者アンケートに基づく分析」産後総研レポート Vol.1 No.3(2026年10月11日発行)、松岡司・高久広・明素延
  • 伊東美智子「デイサービス型産後ケア事業の研究動向と今後の課題」神戸常盤大学紀要 第15号、2022年
  • 徳満敬大ほか「国内における男女の周産期うつ病の有病割合:国内初のメタアナリシスの結果から」精神神経学雑誌125巻7号、2023年
  • 産後総合研究所
  • 産後ヘルパー株式会社

●産後総合研究所 研究員補佐/中小企業診断士・ITストラテジスト・プロジェクトマネージャー 松岡 司

産後総合研究所 研究員/中小企業診断士 松岡 司

IT導入支援を主専門とする中小企業診断士。本業は3Dプリンタの業界団体の常務理事の立場で、3Dプリンタの普及に努めている。長年システム開発に従事した経験をを活かして東京工芸大学ではIT関連講義の非常勤講師も努めている。また、産後ケア株式会社にて、給与明細、請求書を発行するつぎ夢システムの開発に参画し業務効率化に貢献した。産後総研では、統計学観点からのデータ分析等を中心に産後ケアに関する調査・研究に取り組んでいる。


●産後総合研究所 主席研究員、産後ヘルパー株式会社 取締役、中小企業診断士 高久 広

●産後総合研究所 主席研究員、産後ヘルパー株式会社 取締役、中小企業診断士 高久 広

中小企業診断士として3,000社以上の企業の経営支援に23年間従事。2014年、神奈川産業振興センターの創業支援施設で創業直後の産後ヘルパー株式会社の支援を開始し、5年にわたり成長を支援。2019年に取締役へ就任し、経営、マーケティング、Web、労務管理などを担当し、産後ケア業界に13年従事。産後総研では、経営分析や実務データの視点から産後ケアに関する調査・研究に取り組んでいる。


●産後総合研究所 主幹研究員、産後ヘルパー株式会社 代表取締役 明 素延

産後総合研究所 主幹研究員、産後ヘルパー株式会社 代表取締役 明 素延

慶應義塾大学大学院商学研究科で計量経済学・商学を学び、同大学産業研究所共同研究員、商学研究科助教を歴任。自身の出産・産後ケア経験を契機に、2013年から「少子化と経済―産後ケア」を研究テーマとし、韓国の産後管理士資格を取得。2014年に産後ヘルパー株式会社を設立し代表取締役に就任。産後女性の心身の回復と育児支援に取り組んでいる。産後総研では、経営分析や実務データの視点から産後ケアに関する調査・研究に取り組んでいる。


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